ミュシャ展がそごう美術館で開催!詳細

全61作品初来日【ロンドンナショナルギャラリー展】は額装も見どころ!予約制チケットで混雑せず観覧[東京・大阪]

国立西洋美術館で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の写真
この記事は約47分で読めます。

美術展に行く際、わたしが始めにフォーカスしてしまうのは、その企画タイトルです。

映画や書籍のタイトルと同じく、1つの企画展の中身、その物語を謳う(うたう)今回の美術展名は、
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展】。

国立西洋美術館で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の写真

英名は【MASTERPIECES FROM THE NATIONAL GALLERY, LONDON
そのまま訳すると、「ロンドン・ナショナル・ギャラリーの傑作群」。

《MASTERPIECE :マスターピース》とは名作、代表作の意で、本展の展示作品は言わずもがな、すべてがオリジナル。一点ものの原画です。

国立西洋美術館の外観写真
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の様子(2020年)

そして舞台は、東京上野にある「国立西洋美術館」。
※この後、大阪「国立国際美術館」に巡回します。

出展作品リストを見ても来たる画家は大物ばかり、すべて巨匠。
それら全作品(61点)がこぞって初来日…。

この内容に、胸が躍らないはずありません(ᵔᴥᵔ)

コロナ禍で海外渡航が困難な中、異国から渡ってきた作品を“窓”として異国文化を疑似体験できるのが展覧会なのです。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 / MASTERPIECES FROM THE NATIONAL GALLERY , LONDON

■東京会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)→Googleマップ
2020年6月18日(木)〜10月18日(日)
※月曜休館、ただし7月13日、7月27日、8月10日、9月21日は開館

■大阪会場:国立国際美術館(大阪府大阪市北区中之島4-2-55)→Googleマップ
2020年11月3日(火・祝)〜2021年1月31日(日)
※11月16日、11月24日、11月30日、12月14日、12月30日〜1月2日、1月18日は休館

―― この記事を書いた人 ――

アートディーラー
babi/バビ 
神奈川県横浜市にあるアートギャラリーに勤務。普段は画商の仕事をしながら、好きなアートやアーティスト、展覧会について個人的見解を綴るbibiART(当ブログ)を運営しています。 プロフィール詳細→

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目次

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展とは

「西洋絵画の教科書」とも称されるコレクションで名高い、世界屈指の美術館「ナショナル・ギャラリー」(イギリス・ロンドン/1824年設立)が、創立から約200年の歴史で初めて、館外で大規模な所蔵作品展を実施。

それが今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」となります。

国立西洋美術館で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の写真

当初日本では、2020年3月3日から国立西洋美術館(東京)にてスタート予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で2020年6月18日からの開催となりました。

国立西洋美術館の後は、大阪「国立国際美術館」へ巡回しますが、こちらも当初の予定から後ろ倒しとなり11月3日スタートとなります。

特徴:世界初の大規模所蔵品展&全61点が日本初公開

本展で特筆すべきは、全作が日本初公開!という好奇心をくすぐる作品内容。

加えて世界初となる規模(!)での、61点にものぼる…大公開展にあたります。

…考えてみて下さい!

遥か遠い1470年代のイタリア・ルネサンス絵画から、1900年頃までの近代絵画…数百年の美術史と、そこに並ぶ歴史的背景を見れる…という本展は、まさに約400年ものタイムトラベルが出来る夢の企画です。

ルネサンスとは?
「再生」「復活」を意味するフランス語であり、一義的には、古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動である。14世紀にイタリアで始まり、やがて西欧各国に広まった(文化運動としてのルネサンス)。
ーWikipediaより

特徴:西洋絵画史を俯瞰できる全7章の導線

本展は、このような章で構成されています。

  • 第1章:イタリア・ルネサンス絵画の収集
  • 第2章:オランダ絵画の黄金時代
  • 第3章:ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
  • 第4章:グランド・ツアー
  • 第5章:スペイン絵画の発見
  • 第6章:風景画とピクチャレスク
  • 第7章:イギリスにおける フランス近代美術受容

すべての章を通じたコンセプトは、“イギリスにおいて築かれた西洋美術のコレクション”。

見どころは作品配列にあり!ただ名作を並べただけではないのですね(#^.^#)

7つの章に分けられた構成は、美術館の性格を活かして「イギリスとヨーロッパ大陸の交流」という視点から西洋絵画史を俯瞰できるような導線になっています。

国立西洋美術館で開催の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の順路
順路(国立西洋美術館 B1)

国立西洋美術館の企画として、いつもと違う“含みのある”順路になっています。

第1章の展示室は、ルネサンス美術の特徴である《調和》《完全》を意識し、左右対称の円に近い八角形を選ばれたそうです。

真ん中(第1章)から始まり、その後ぐるりと回っていく、という順路は国立西洋美術館のル・コルビジェが作った本館と同じような順路で、これはルネサンス建築にもよく出てくる形だったとのこと。

主催サイドの企画展に対する“徹底したこだわり”を感じて止みません。

作品の選抜内容、魅力を語るには、本展開催にあたり公式サイトで企画解説をされている、国立西洋美術館の主任研究員で本展監修者でもある川瀬佑介さんのお話を引用するのが一番!

川瀬さん談:
「ロンドンにあるナショナル・ギャラリーから、史上初めて何と61点もの作品が館内を離れ、海外、国外に持ち出される、というエポックメイキングな大事な展覧会になります。」

川瀬さんのご説明通り、“時代、時代を築いてきた作家”の作品が降り立つ旧時代→新時代…という作品序列に、その間に起こった“文化運動”など、当時の事象を交えながら展観されています。

視覚芸術である絵画は、美術の知識がない方でも目で見て存分に楽しめる芸術です。

しかし、絵画をただ‟見る”だけではなく、“読む”ことができるようになると、美術展の企画自体がまるで一冊の本…精度の高い《物語》であることにも気づけます。

特徴:誰もが名前を聞いたことのある名画も集結

日本国内ではあまり知られていない著名な画家の秀作(そういう作品こそ観て欲しい!)も数多く展示されている本展ではありますが、誰もが知っている画家・名画も来日しています。

日本人に特に好まれる(と、されている)印象派、ポスト印象派の名画も一挙公開です!!
モネ、ドガ、フェルメール、レンブラント、ルノワール、ゴッホなどなど…美術の教科書にも名を馳せる画家陣も集結。

(国立美術館)ナショナル・ギャラリーについて

本展に展示されている全61作品はすべて、イギリスにある国立美術館所蔵の作品です。

イギリスロンドン、ナショナルギャラリーがあるトラファルガー広場の写真
トラファルガー広場とナショナルギャラリー

それがイギリスのロンドン中心部、トラファルガー広場の北側に鎮座する、国立美術館「THE NATIONAL GALLERY(ナショナル・ギャラリー)」。

1824年に設立され、13世紀半ばから1900年代の美術コレクション2,300点以上を所蔵していて、そのコレクションは「西洋絵画の教科書」と称されるほどです。

最も集客力のある美術館ランキングで世界TOP5入りし、年間の訪問者数は640万人にものぼる、世界の名美術館の一つとして知られています。

特別な企画展示をのぞき、入館は無料

※維持管理費用の一部をまかなうため、寄付を募る箱が入口ほか、館内の数カ所に設けられています。

パンダの赤ちゃん、シャンシャン効果がすごかった上野動物園の2017年度年間入園者数が約420万人だそうです(*´ω`*)

ナショナル・ギャラリーの特徴と魅力

コレクションの基礎がナショナルコレクション(国家所蔵である作品群)ではないため、ヨーロッパでもあまり例のない国立美術館です。

初期のコレクションは個人からの寄付によって成り立っており、創立当時の収集活動は、多くの寛大な寄贈者たちの審美眼や、何代もの館長や理事たちの熱意の結実によりなされました。

ロンドンにあるナショナル・ギャラリーの内観写真

比較的コンパクトな空間、そしてよく整理されたコレクションの中で、来館者が西洋絵画の全体的な歴史を概観することが出来るという点で、世界で唯一の絵画館。

西洋絵画が大きな革新を見せた「ジョットからセザンヌまで」美術史上重要な絵画が収蔵されています。

また、作品が描かれた当時の額装、もしくは当時の額装を復元するなど、絵画と額縁の関係性を重視している美術館でもあります。

時代を構築してきた歴代の西洋オールドマスターたちの一級絵画を、無料で鑑賞できることからも、市民の、市民による、市民のための啓蒙運動で成り立ってきた国立美術館、それがナショナル・ギャラリーなのです。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の感想レポート

鑑賞した上での、わたしなりの見どころを掘り下げてみました。

  1. “異世界に導く窓枠”、額装について
  2. 全7章における絵画のヒエラルキー(階級)

本当はあと10項目ぐらいあります…!

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の見どころ①:額装

前回、【バンクシー展 天才か反逆者か / BANKSY GENIUS OR VANDAL?】の感想レポートでも挙げたように、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を拝む上で、わたしが楽しみにしていたものがズバリ《額装》です。

額縁もまた、作品になりうるのです。

今や絵画に当然のように取り付けられている額縁ですが、実はほとんどの絵画作品が、描かれた当時に収められていた額縁には入っていません。
美術館所蔵の名画ですら、です。

要因はさまざまで、多くは戦争や略奪による焼失や消失。そして時代の流行の変化や、売買された際に付け替えられたりしたことも…。

メトロポリタン美術館にある額縁の写真
ニューヨークのメトロポリタン美術館にてバビが撮影


額縁が付くことで、絵の中の構図が引き締まっていることや、モチーフが持つ深い意味合いに気付かされる…

額縁は、異世界へ心地良く導く“窓枠”とも言えます。

メトロポリタン美術館にある作品の写真
ニューヨークのメトロポリタン美術館にてバビが撮影

今日では、額縁から時代ごとの様式が見て取れることや、施されているデザインに意味があることなどから、額装は重要視される傾向にあります。

ナショナル・ギャラリーでは、絵画と額縁の関係性を重視し、描かれた当時の額縁を復元するという試みを早い段階から、そしてとても高いレベルで実現しています。

そんなナショナル・ギャラリーだからこそ、展覧会公式サイトで見どころの1つに《額装》を挙げているのも納得です。

『聖エミディウスを伴う受胎告知』(カルロ・クリヴェッリ)の額装

今回、わたしが本展に足を運んだ最大の目的は、カルロ・クリヴェッリの『聖エミディウスを伴う受胎告知』と、その取り付けられた額縁を拝むため!…です。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「聖エミディウスを伴う受胎告知」作品写真
『聖エミディウスを伴う受胎告知(1486年・卵テンペラ・油彩)』カルロ・クリヴェッリ
(C) The National Gallery, London.

クリヴェッリは、初期ルネサンス、ヴェネツィア派の画家です。

ルネサンス時代に樹立された《遠近法》と、余すことなく描かれる登場人物の《物語》。

一人一人の動作、仕草、表情すべてに意味を持たせ、受胎告知という「聖なる瞬間」を描いた場面をドラマチック、かつユニークに見せています。

ルネサンス時代の《日常》も感じられ、500年ものタイムトラベルが出来ます。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「聖エミディウスを伴う受胎告知」作品写真
『聖エミディウスを伴う受胎告知(1486年・卵テンペラ・油彩)』カルロ・クリヴェッリ
(C) The National Gallery, London.

真ん中の窓の格子の描写などは、現代のアニメーションのような3D感があり、大理石の目の模様など、画材による描きわけが秀逸で、質感を体感できるほどです。

見手を奥に引き込む遠近法からくる“視覚効果”は、まさに15世紀のトリックアート…!

そして作品の“窓枠”ともなる額縁のレリーフ(彫刻)部分も圧巻。

右側に描かれた建物の柱の模様と、左側に描かれた柱と位置関係がこれ以上ない!くらいに計られ、合わせられたレリーフ模様。

もし、本展監修者である川瀬さんや関係者の方々が当ブログを読んでくださる奇跡が起きたら…この額が、描かれた当時から残るものなのか?それとも後に絵に合わせて作られたオリジナル額装なのか…を、ぜひぜひ伺いたいです。

西洋美術館でスタッフさんに聞いてみたのですが、分からず…でした。笑

『聖エミディウスを伴う受胎告知』だけで長文のブログ記事が書けそうなくらいの大作…これを拝めるだけでも本展を訪れる価値があります!

『ロバート・ホランド夫人』(アリ・シェフェール)の額装

書籍「額縁と名画」にある『ロバート・ホロンド夫人』の額装写真
書籍『額縁と名画』P.43より

第7章にあるアリ・シェフェールの『ロバート・ホランド夫人』という作品は、描かれた1851年当時、絵に合わせて作られたオリジナル額縁です!

“復元”ではなく、画家自身が選んだ、あるいはデザインしたと思われる額縁。

四隅のスパンドレル部の曲線を描いた縁の仕上げが、格別に高価で高度な技術を要する額縁です…!

第7章は展覧会の最終章にあたり、みなさまの集中力が少し途切れた頃に訪れる部屋ですが…『ロバート・ホランド夫人』は、入って右側の壁に展示されていますので、絶対にゼッタイにこの額縁はお見逃しなく…!

babiおすすめ書籍「額縁と名画」

書籍「額縁と名画」の装丁写真
著者名: ニコラス・ペニ-(八坂書房・2003年)

昔から読んでいる、わたしの愛読書「額縁と名画-絵画ファンのための額縁鑑賞入門」。

『ロバート・ホランド夫人』の額装写真が載っている本で、著者はなんと、ナショナル・ギャラリーでルネサンス絵画部門のキュレーターを務めるニコラス・ペニーさん!

他の解説本にはなかなかない、“額縁に入った絵画”のイメージ写真を掲載・解説してくれている具体的な一冊で、本展以前からの愛読書なのです。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の見どころ②:絵画のヒエラルキー

考え抜かれて構成に秀でた「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を鑑賞するには、‟絵を読み解くための鍵”を、事前に当ブログbibiARTで拾ってから鑑賞いただいた方が、鑑賞後の感動量も豊作です(*^^*)

世界的傑作がカテゴライズ展示されている全7章に共通する“絵を読み解くための鍵”…それは、西洋絵画のヒエラルキーです!

絵画のヒエラルキー(階級図)
絵画のヒエラルキー

ヒエラルキーとは階級のことで、とりわけ17、18世紀のフランスアカデミー(王立美術団体)では、属性が明確にジャンル分けされ、格付けと序列がなされていたのです。

現在はどのジャンルも各々で確立され、こうした序列はありません。

ナショナル・ギャラリー設立は1824年。
開館当時は、この階級を模範とする美術思想を持った方々(保守派)が多くいたため…このヒエラルキーの上位から、作品収集がなされていたそうです(´⊙ω⊙`) ))

“旧絵画を読む”ためには、絵が描かれた当時の、国や地域に根付く宗教観や死生観、思想や文化を知ることが近道。今とは異なる“常識”が、そこにはあります。

当時はその価値を認められていなかった作家・作風が、ナショナル・ギャラリー開館から今日までの約200年もの時間の中で“承認”されてその彩りを培ってきました。

そんな多様性にあふれる美術品が集結するまでの“時の堆積”も感じて欲しいという、主催者側の意図が込められているのではないか…!?

さまざまな作家や国との関わりを知ることで「名画は一作にして名画と謳えず」ということが実感できます。

全7章から構成される本展は、旧時代から新時代に向けて順列されており、ヒエラルキーの順序通り、第1章は階級の最上位にあたる歴史画から幕を明けます。

第1章:イタリア・ルネサンス絵画の収集

絵画のヒエラルキー(階級図)

第1章の見どころ:歴史画と遠近法
展示作品の製作年代:1470年頃~1575年頃

ヒエラルキー最上位に位置する歴史画

第1章にある宗教画、神話画は、このヒエラルキーの歴史画(歴史・宗教・神話・文学・寓意などを主題とする絵画)に属すジャンルです。

今となっては、より古い時代の絵画という意味でも歴史的価値が高いジャンルです。

物語の幕開けは、ナショナル・ギャラリー設立当初の1824年…イタリア・ルネサンス絵画のコレクションから。

当時のナショナル・ギャラリーのパトロンや収集家が、どの流派よりも重視していたのが、歴史画というジャンルなのです。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「天の川の起源」作品写真
『天の川の起源(1575年頃・油彩)』ヤコポ・ティントレット
(C) The National Gallery, London.

無数の星の連なる“天の川”の起源を絵で見せたもの。

天の川のイメージ写真
天の川


“ミルキーウェイ(=乳の道)”という名の由来が分かる作品です。

世界を創るとされた神々、その神聖な世界を描いた歴史画。

神の教えを説く、寓意(ぐうい)を込めたこのジャンルは、描く人だけでなく、観る人にもある程度の知識・教養が求められることから、最も高尚なジャンルとして絵画階級カーストの頂点に君臨していたんですよね。

「神様=絶対的な存在」→モチーフとしての頂点と見なされていたのですね!

寓意ぐうい(=アレゴリー)とは?
意味を直接には表さず、別の物事(絵画ではモチーフ、絵柄)に託して表すこと。

解説を見ないと絵のモチーフに込められた意図が不明…。
しかし、暗喩が分かるとこれほど面白いジャンルはない!というのが歴史画なのです。

平面の中の立体、遠近法

美術史の中でも歴史に残る大発明を1つ挙げるとすれば、それはこのルネサンス期に確立された《遠近法》と言えます。

平面(2D)の絵画を立体(3D)にしていく…というアレです♪

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「聖ゼノビウス伝より初期の四場面」作品写真
『聖ゼノビウス伝より初期の四場面(1500年頃・テンペラ)』サンドロ・ボッティチェッリ
(C) The National Gallery, London.

日頃、美術館で当たり前に見ている絵の中の“奥行き”。

ルネサンスのこの時代、自然科学や解剖学の観点から解析が進み…さらに建築学の見解から、視覚効果を活かした遠近法が絵の中に取り入れられたのです (´⊙ω⊙`) !

私たちが遠くの自然を見た時の「視覚効果」が、絵の中にそのまま入ってきたイメージです。

まだカメラもない時代

第1章では、絵画の基礎技術の遺産ともなる初期の《遠近法》の技術を、年代ごとに比較して堪能してみて下さい。

技術の進化は、年代からも比較して見てとれます!要チェックや♪

第2章:オランダ絵画の黄金時代

絵画のヒエラルキー(階級図)

第2章の見どころ:絵画のジャンルを先取りしたオランダ黄金期の奇跡
展示作品の製作年代:1640年頃~1672年頃

第2章では、現存するほぼすべての絵画ジャンルをいち早く確立した、オランダ黄金期の肖像画、風俗画、静物画、風景画がこぞって集結します。

ここではその中の風俗画、静物画をピックアップして紹介いたします。

オランダ黄金時代とは?
オランダの歴史における貿易、科学、軍事、芸術が世界中で最も賞賛された期間で、おおよそ17世紀~同世紀末にあたり、ネーデルラント連邦共和国で続いた平和な時代を指します。

ようやく承認され始める風俗画

肖像画にも、風景画にも属さない、日常生活を描写する風俗画における本展の代表格がヨハネス・フェルメールでしょう。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ヴァージナルの前に座る若い女性」作品写真
『ヴァージナルの前に座る若い女性(1670-72年頃・油彩)』ヨハネス・フェルメール
(C) The National Gallery, London.

↑今でも謎が多い本作。作中の背景に描かれている絵画は実在するテーマ『取り持ち女』

ヒエラルキーの影響もあり、今や絶大な人気を誇るフェルメールの作品でさえ、同館に加えられたのは1910年のことだと言います。創設から86年後のことです。

当時のイギリスでは、貴族ではない肖像画や、一般市民の日常の一コマを描いた風俗画などは、収集するに足らない作品と思われていたんですね( U༎ຶོ ᴥ ༎ຶོU )

風俗画への評価が上位2つのジャンルより下と見なされたのは、このようにモチーフの対象である人物の階級そのものが、神々や、王族貴族より低かったから…。

しかし、絵の中に秘められたストーリーの紐解きがされるとともに、価値解釈も広がり、創設から80年以上経ってから、イギリスでも風俗画のジャンルが承認されていきます。

繁栄の象徴として描かれた静物画

命がなく、動かないものを描いた作品が静物画であり、花瓶に生けられた花や、命尽きた動物を描いたものも静物画とされます。

17世紀のオランダにおいて隆盛した静物画。
当時オランダは貿易による領土拡大で富を築いた海運国家で、世界中から珍しい品々が集まりました(日本と外交をしていたのもこの時期ですね)。

当時の静物画は、これら「繁栄の象徴」を描いたものと言えます。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ロブスターのある静物」作品写真
『ロブスターのある静物(1650~59年・油彩)』ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ
(C) The National Gallery, London.

精緻な表現、1枚のガラスを透過して表現される光が、魔力的な誘引力を持つ静物画です。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ロブスターのある静物」作品の拡大写真
(C) The National Gallery, London.

画家が何を選び、どのような意図を持って配置されたのかを読み解ければ面白いのが静物画༚
何よりも驚くべきなのは、描かれた異なるモチーフの質感の再現でしょう。

グラスに反射する窓は鑑賞者の目前にはない世界の存在を暗示、金のゴブレットの上には軍神マルスと思われるローマ兵が荘重(そうちょう)さを醸し出します。


19世紀後半になり古い価値観が廃(すた)れると、盛んにオランダ絵画が収集され始め…今ではルネサンス絵画同様、ナショナル・ギャラリー所蔵コレクションのメジャーパートを占めています。

第2章の、こうした風俗画や静物画からは、当時の人々の部屋や、生活空間の中の贅沢なカトラリーなどを介し、17世紀の黄金期にあったオランダ商人の日常や習慣を垣間見ることができます。

約350年もの昔です…絵画はまさにタイムマシーンですね( ᵔᴥᵔU

第3章:ヴァン・ダイクとイギリス肖像画

絵画のヒエラルキー(階級図)

第3章の見どころ:オランダ絵画の流れで誕生したイギリス画家の個性
展示作品の製作年代:1635年頃~1790年頃

前章の、全盛期のオランダ絵画(フランドル地域も含む)から受けた影響、その流れで誕生したイギリス画家における個性を見て取れる章です。

アンソニー・ヴァン・ダイク

アンソニー・ヴァン・ダイクの肖像画写真
アンソニー・ヴァン・ダイク
(C) The National Gallery, London.

イギリス肖像画において欠かせない存在が、フランドル出身のヴァン・ダイク
※フランドルとは、現在のベルギー、オランダ、フランスにまたがる歴史的な地域を指します。

アンソニー・ヴァン・ダイク(1599年〜1641年)
バロック期のフランドル出身の画家。1632年イングランドに渡り、国王チャールズ1世からロンドンに招かれ、王をパトロンとし主席宮廷画家として大成功を納めた画家である。


美術の面では長らく不毛の地であったイングランドに渡り、生粋のイングランド人より先駆けて絵画史を席巻した一任者。

Wikipediaより

絵画史において、権力・権威の象徴だった肖像画

肖像画を残される人物は、歴史上の聖人から偉人。肖像を描かれ、残されることは遥か昔から名誉なことでした。

この時代、まだ写真は存在しません。

自信の名声や血統を残すツールとして、また富裕層から権力の象徴として求められた最たるジャンルが肖像画だったのです。

そんなイギリス黄金期の肖像画が、この章には集結しているのです…!

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」作品写真
『レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー(1635年・油彩)』アンソニー・ヴァン・ダイク
(C) The National Gallery, London.

これは肖像画に変革をもたらしたヴァン・ダイクによる作品。

時代を超越して存在する神や、語り継がれるべき重要人物であるかのようなオーラを醸し出しています。

宗教画も得意としていたヴァン・ダイクは、その知恵を肖像画で活かし、その人が持つ“気高さ”を神々しく描いたことで王室から絶大なる評価を得ます。

ヴァン・ダイクによるこうした作為的な、富や地位などの属性を自然に持たせる描き方、方式は、イギリスの新たな富裕層においてその後20世紀までも人気を博します。

ヴァン・ダイクの特性を引き継いだ、130年後のイギリス肖像画

わたしの大好きな画家の一人、ジョセフ・ライトの貴重な肖像画も来日しています!

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「トマス・コルトマン夫妻」作品写真
『トマス・コルトマン夫妻(1770-72年頃・油彩)』ジョセフ・ライト・オブ・ダービー
(C) The National Gallery, London.

イングランドの画家、ジョゼフ・ライト・オブ・ダービーによる『トマス・コルトマン夫妻』。

ここ、第3章で面白いのは、他国の画家ヴァン・ダイクの肖像画と、その流れを汲んで生まれたイギリス画家が描いたイギリス独自の肖像画の比較です。

フランドル(オランダ/1599年生)出身のヴァン・ダイク、そしてイングランド(イギリス/1734年生)出身のジョセフ・ライト。生まれた年も約130年の隔たりがありますが比較が面白いのです。

他国の肖像画と違い、イギリス肖像画は物語性の高い「カンバセーション・ピース」と呼ばれる、まるで会話をしているかのような動きが特徴です。

雰囲気は少し風俗画に似ていますが、ポーズや配置は、依頼主からの要望に基づいて計算して描かれています。

先のヴァン・ダイク肖像画に倣い(ならい)、複数人を1枚に描いたことで「二重肖像画/ダブルポートレイト」と呼ばれるタイプでもあります。

しかし、その登場人物の表情や仕草などはヴァン・ダイクの描くそれとは明らかに違う。

“両者我関せず”というヴァン・ダイクの肖像画と違い、自分達が立派に実存するという事実を示す必要があったため、肖像画には神秘よりもリアリティを求めていったんですね。

また、第3章で必ず鑑賞いただきたい肖像画がこちら!

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「55歳頃のジョン・ジュリアス・アンガースタイン」作品写真
『55歳頃のジョン・ジュリアス・アンガースタイン(1790年頃・油彩)』トマス・ローレンス
(C) The National Gallery, London.

この肖像画のモデル、ジョン・ジュリアス・アンガースタインさんは、ナショナル・ギャラリーのコレクションの礎を築いた、本展における主要人物です。

1824年、この方が所有する38点のコレクションからナショナル・ギャラリーは始まりました。

第4章:グランド・ツアー

絵画のヒエラルキー(階級図)

第4章の見どころ:イギリス国民の素養を高めた世紀の画家たち
展示作品の製作年代:1708年〜1760年頃

第4章は、第6章にも連なる風景画というジャンルです。

広大な風景を忠実に描くには、緻密な構築が必要になるため、相当な技量が必要となる風景画。

15世紀初頭、歴史画の背景として描かれ始めた風景画ですが、一つのジャンルとして確立したのは17世紀初頭と遅れをとったジャンルでした。

そして、この風景画に需要を見出したのはイギリス。

その理由の1つとして、第4章のタイトルにもなっている「グランド・ツアー」が挙げられます。

17世紀初頭より、オランダと並び大航海時代を席巻したイギリスは、ヨーロッパでも1、2位を争うほどの大国になるものの、芸術国家としての地位を上げるためには自国に“大画家”と言える作家がまだ少なかったのです。

そんな状況で当時のイギリスの富裕層たちは、文化的先進国であるイタリアで教養を培うツアーを計画します。

それが、17世紀に始まり18世紀に最盛期を迎えた「グランド・ツアー」なのです!
一大文化現象となりました。

富と名誉ある紳士は誰でも、最低2年間、このツアーで研鑽・見聞を積みました。

イタリアの中でも、古代を知るに最適な《ローマ》、ルネサンスの拠点《フィレンツェ》、享楽の街《ヴェネツィア》の3ヶ所は、ツアーの行き先として必須とされていましたv ( ᵔᴥᵔ )

イギリス人にも大人気だったカナレットの風景画

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」作品写真
『ヴェネツィア:大運河のレガッタ(1735年・油彩)』カナレット
(C) The National Gallery, London.

貴族の名家に相応しい景観を描ける画家が人気を博し、細部まで忠実に表現されたカナレット(本名:ジョヴァンニ・アントニアオ・カナル)の風景画は大人気でした。

ルネサンス美術を敬愛するイギリス貴族がヨーロッパ文明の源であるイタリアを訪れ、絵葉書を買うがごとく、文化都市イタリアの風景画を求めたのです。

イギリスにおける多くの歴史ある家では、カナレット作品のような当時のイタリアの名所を描いた風景画を見つけることが出来るそうです!

ただの旅行にとどまらない重要な意義を持このムーブメントが、絵画史を変えるほどの文化的な交流となる…そういった流れが、追って第6章へとつながってきます。

第5章:スペイン絵画の発見

第5章の見どころ:スペイン絵画における大御所の集結
展示作品の製作年代:1600年頃~1814年頃

17世紀に黄金期を迎えたスペイン絵画ですが、スペイン人は政治、貿易上のライバル関係に加え、宗教的にも対立関係にあったイギリスに渡ることはしばらくありませんでした。

…が、逆に18世紀イギリスで、画家や評論家(同じくカトリック教徒である一部の人種や層の人々)が、スペイン美術に興味を持ち始めたのです。

その中の1つが、理想化された少年少女の絵。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」作品写真
『幼い洗礼者聖ヨハネと子羊(1660~65年・油彩)』バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
(C) The National Gallery, London.

この『幼い洗礼者聖ヨハネと子羊』や『農家の娘』(トマス・ゲインズバラ作・アイルランド国立美術館所蔵)のように愛らしく理想化された少年少女の絵は、肖像画に理想を求めたイギリス人に爆発的な人気を誇ったのでしょう。

ちょうど、ヴァン・ダイクが貴族の高貴さなどを、神秘的な表情で理想化する肖像画を流行らせた頃でもあります。

聖ヨハネは絵画の世界において若年から壮年の男、髭を生やした大人として描かれていましたが、スペインではその姿を子供として描くことが流行りました。

キリストの贖罪など、宗教的なメッセージを比較的感じさせない部分が、イギリスでは流行、高い評価を生む1つの布石になったとされます。

1819年には、スペイン・マドリードに「プラド美術館」も開館。

スペインの王室コレクションが一般公開されていったこともあいなり、19世紀前半には、真の意味でスペインが発見されます。

ナポレオン戦争(~1815年)終結後、ヨーロッパ中で異国趣味が流行し、その中でスペイン絵画に対する関心も一層高まりました。

スペイン絵画は、イギリスの素晴らしい肖像画家を育てることにも一役買ったのですね。

「スペイン絵画」におけるさまざまな大御所を集約しているところも第5章の見どころ。

スペイン国内で独自に形成された絵画様式も、年代ごとに見て取れます。

例えば本展に来ているエル・グレコ画の作品。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「神殿から商人を追い払うキリスト」作品写真
『神殿から商人を追い払うキリスト(1600年頃・油彩)』エル・グレコ
(C) The National Gallery, London.

こちらのエル・グレコ(本名:ドメニコス・テオトコプーロス)による“劇画タッチ”な画風は、「マニエリスム様式」と呼ばれる、ルネサンス後期(1525-1600年頃)に生まれた絵画傾向です。

脅威や一種の仄暗さ(ほのぐらさ)も含んだ作品は、やはり保守派に認められるには時間を要しました。

しかし、この作品に限っては、ルネサンス美術の研究者でもあるスペイン美術のコレクターから絶賛され…1895年、ナショナル・ギャラリーに寄贈。

「自然を凌駕する高度の芸術的手法」と定義づけられ、「ありのままを描くだけではなく、絵画らしく誇張し描くべきである」という動きが隆盛した時代の画風です。

この『神殿から商人を追い払うキリスト』の燃えるような筆致と、人物の踊るような動きは必見です!

第6章:風景画とピクチャレスク

絵画のヒエラルキー(階級図)

第6章の見どころ:画家の感性が生きるピクチャレスク
展示作品の製作年代:1641年頃~1836年頃

第6章は18世紀のイギリスの風景画、そして画家の感性が生きる「ピクチャレスク=絵のような」画が集結する輝かしい章になります。

グランド・ツアーの成果!?「イギリス画家による風景画」というのがこの章のミソです!

実は、この第6章に出てくる画家の影響で、第7章の画家、クロード・モネなどの《印象派》と呼ばれる画家の、“風情ある風景画”が世に生まれてくるのです…!

ピクチャレスクとは?

「ピクチャレスク」とは、一言で言うと“絵になる絵”

写実的な手法でありながら、イギリス人が求める田園風景、散策したい景観美のある空想風景画のことを言います。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「水飲み場」作品写真
『水飲み場(1777年・油彩)』トマス・ゲインズバラ
(C) The National Gallery, London.

トマス・ゲインズバラによる、この『水飲み場』は、実際には存在しない場所。自身が理想とする、頭の中にある風景を描いた景色です。

構図が視覚に収まる心地良いバランスで遠近感もある…など、さまざまな要素を含んだ“絵のような風景”というのは18世紀のイギリスで確立されます。

こうした絵画を求めた背景には、産業革命という歴史的事象がありました。

世界に先駆けて18世紀中頃から産業革命が進展したイギリスにおいて、特に革命的なイノベーションだったのが、蒸気機関車の開発。

蒸気機関車のイメージ写真

イギリスは「鉄道狂時代」に突入したことで、19世紀中頃には、全国の主要都市はすべて鉄道によって結ばれるようになります。

都市開発により、急速に失われていく自然に対しての人々の意識が、理想的な田園風景を追い求める原因に…

さらに時代は18世紀末から19世紀への転換期…隣国フランスと戦争状態にあり、ナポレオン戦争による大陸封鎖の影響から、思想や文学、美術などあらゆるジャンルに対しアイデンティティを見出し始めます。

20年もの間、他国と距離をおいたことが、国土に対する関心や愛着を深める好機になったんですね!

鎖国によって「国風文化」が生まれた、日本と同じようなアートムーブメント!

ウィリアム・ターナーの出現

イギリスが誇る風景画家トマス・ゲインバラが没して以降、すい星のごとく現れたロンドン出身の風景画家が脚光を浴びます。

ロマン主義の巨匠、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーです。

ターナーは、1819年、44歳にして初めてイタリアを旅行し、水の都であるヴェネツィアで水や水面に反射する光、そして大気を描くヒントを得て、自身の画風に革命を起こしました。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」作品写真
『ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス(1829年・油彩)』ウィリアム・ターナー
(C) The National Gallery, London.

イギリス画家に多大な影響を与えた18世紀イタリアの景観画家、カナレットへの賛辞が示されている、このような作品も多く描いています。

ターナーのおかげで「風景画=ピクチャレスク」というジャンルが国際的なものに発展するのです。

同じく、第6章で見逃してほしくない作品がこちら!

ターナーに大きな影響を与えた、クロード・ロラン

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「海港」作品写真
『海港(1644年・油彩)』クロード・ロラン
(C) The National Gallery, London.

ターナーにとって大きな影響を与えたフランス人画家の巨匠、クロード・ロランの風景画『海港』。

ターナー は、ロラン作品の色彩の明るさ、パステル調の風合い、何よりも巧みな“光の効果”に注目したとされています。

この絵が描かれた当時、一般的に風景画は歴史画の体裁をとっていましたが、ロランは比重を逆転し、風景が主役になる作品を生み出します。

これが当時の人々に大ヒットし、ヨーロッパ中に風景画が流行!!

そんなロランの後を追ったのがターナーでした。
ロランの本作『海港』は第3章で紹介したアンガースタインさんが、ナショナル・ギャラリー設立当初に寄贈した38点の内の1点なんです!

1824年当時から美術館の歴史を築いてきた、最も古い作品の1つです。要チェック( ᵔᴥᵔU

本展では、ロランの絵に対し、ターナーの絵が斜め向かいの位置に展示されています。

ロランのエキスを存分に吸い込んだターナーの大作。絶対に!この風景画の2大巨頭作品を比較してご鑑賞下さい!

第7章:イギリスにおける フランス近代美術受容

第7章は、ターナーらイギリス画家から影響を受けたフランス画家の作品→イギリス国立美術館が時をかけて承認!…という、その技が自国に《回帰》する流れがあります。

第6章からの“受け継がれる意志”を感じられる第7章です♪

第7章の見どころ:筆致と色彩革命
展示作品の製作年代:1819年頃~1900年頃

それまでの西洋絵画で重視されてきた写実性を取り払ったフランス絵画ですが、保守的な趣味が支配的だったイギリス画壇では、印象派を中心とする個性的なフランス近代絵画が受け入れられるには時間がかかりました。

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「劇場にて(初めてのお出かけ)」作品写真
『劇場にて(初めてのお出かけ)1876〜77年頃・油彩』ピエール=オーギュスト・ルノワール
(C) The National Gallery, London.

印象派最盛期のルノワールの絵ですら、イギリスの美術館に入るには、作品誕生から半世紀もかかったそうです…(´⊙ω⊙`)!

第7章にある作品達は、古典画法がまだ重んじられていた当時において、個性が過ぎるものとされていたのですね。

当時は“個性が過ぎる”と酷評すらされたフランス絵画がナショナル・ギャラリーにも収集されるようになったのは、イギリス人実業家で大コレクターでもあるサミュエル・コートールドさんの存在が欠かせません。

「イギリスの国立美術館にフランス近代絵画がまったくないのは間違っている」と多大な寄付をし、その資金より購入されて国のコレクションになったのが…そう、フィンセント・ファン・ゴッホの名作『ひまわり』などを含む、第7章に並ぶ、絵画の新時代を生んだ時の名画です。

第7章の作品には、これまでの章で目立たなかったあるモノが全面に出てきます!

それはズバリ…各画家の《筆致ひっち です。

画家の個性を開放させた筆致

第7章では、流れる時を表現しようとした《筆致》と、屋外で絵を描く“外光派”とも呼ばれる印象派前後の作家たちが自然光を研究した《》をたっぷり堪能できます!

筆致とは…?
書画における筆の書きぶり、ストローク(筆さばき)のこと。筆に限らず、手などで何か跡を残せば、それが《筆致》となります。主に、描かれた絵や文字の雰囲気のことを指します。

筆致が生み出された背景には「カメラの誕生」と「絵の具の向上」、この2つの技術の進歩が影響しています。

1870年代には、持ち運び可能な既製品カメラが普及し始めたことで、写実技術だけでは写真に叶わない時代が来ました。

1940年代から、技術革新によって絵の具の質が急速に向上。
持ち運び出来る「絵の具チューブ」が発明されたことで鮮やかな発色の絵の具が巷(ちまた)に流通したのです。

ナショナルギャラリー所蔵の「睡蓮の池」作品写真
『睡蓮の池』クロード・モネ
(C) The National Gallery, London.

逆にそれは屋外での絵画製作が可能になったことでもあり、アトリエから離れ屋外で自然観察することで、筆致=筆さばきを駆使し、印象派の画家達は“光のスペクトル”や“色そのもの”について考察。

それぞれの探求結果をキャンバスに発露させていきます。

第6章で鑑賞できる他国の「自由」を解放した作家の作風が、第7章に並ぶ「自由」を求めた画家の筆致や、新画風へとつながってくるんですよね(*´∀`*)感無量

せっかくなので本展の中で最も知名度の高い作品について取り上げてみましょう★

ナショナル・ギャラリーの想いか、本展のフィナーレを飾るため、第7章の最後の最後、個別ブースに配置されているゴッホの『ひまわり』と筆致・色を絡めてお話ししてみたいと思います。

フィンセント・ファン・ゴッホ『ひまわり』

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ひまわり」作品写真
『ひまわり(1888・油彩)』フィンセント・ファン・ゴッホ
(C) The National Gallery, London.

本展に展示されている作品を含むフィンセント・ファン・ゴッホの『ひまわり』は、1888年頃から同時期に集中して南フランスのアルルで描かれた全7作のシリーズ(内、2作目のひまわりは焼失。世界に現存するものは6点)。

ナショナル・ギャラリーが所蔵するのは、4作目に描かれた『ひまわり』で、本作品の魅力は背景にあります!

この4作目の『ひまわり』は、日本との関連性がいくつかあるんです( *´艸`)

本展に展示されている『ひまわり』、実は東京のSOMPO美術館(旧:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)が所蔵する5作目の『ひまわり』の元になった作品です!

ゴッホのひまわり、3作目から4作目の比較画像
『ひまわり』3作目~5作目

ゴッホ自身、4作目の出来栄えを気に入り、続く5、6作目の『ひまわり』でも花の形&本数(15本)を同じにしてそっくりに描いています。4~6作目を比べてみると瓜二つですよね。

4作目までは、南フランスのアルルで夏に描かれた作品…実際の花を前に描かれたものです。5作目以降は、4作目を模写したものです。

そしてこれ以外にも…「背景の筆致」と「背景の黄色」の2点から、日本にとって大変意味のある感慨深い作品とも言えるんです!

『ひまわり』背景の魅力:筆致

独特の筆致を語るならこの画家…というほど、うねりの強い筆致が有名なゴッホ。
この『ひまわり』作品をご鑑賞の際は、花だけではなく背景の筆致にご注目ください。

アート通にはたまらない裏メニュー。それが背景の筆致!

ロンドンナショナルギャラリー所蔵の「ひまわり」作品写真
『ひまわり(1888・油彩)』フィンセント・ファン・ゴッホ (C) The National Gallery, London.

この、格子状になっているような筆致。

実はこれ、日本が誇る江戸の浮世絵…それも、“縮緬(ちりめん)浮世絵”と呼ばれる種類の浮世絵の、ちりめん和紙の紙面の繊維を再現しようとしたものなんです!

ゴッホ美術館が所蔵する「草木花鳥図」の作品写真
『草木花鳥図』 (C) Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

モネやゴッホ達がいた時代…19世紀後半は、近代の西洋画家が日本美術の趣や造形感覚をとりこむムーブメント「ジャポニズム(=日本趣味)」が起きた時代。

ゴッホ も、そんな日本の美意識をいち早く自身の画風に取り込んだ画家でした。

クレポン(フランス語でちりめんの意)は、和紙に刷られた普通の色刷り木版画ですが、刷った後に紙が縮んでシワができるようにプレス加工され、このシワが“布”のように見えます。ゴッホはその独特の絵肌と、鮮やかな色彩の虜になってしまったのです。

1885年頃から、ゴッホは浮世絵を真似た絵画を数多製作、探求していましたが、その成果が見事に形をなして来たのが、この時期の『ひまわり』なのです!

日本へのオマージュが詰まっている作品がこの『ひまわり』なのだ(#^.^#)

『ひまわり』背景の魅力:黄色

本作品が日本にとって感慨深いもう1つの理由、それは背景色に使われている《黄色》です。

中世ヨーロッパ―の時代に黄色は《嫉妬》や《裏切り》とされ、以後しばらくは好まれない風潮があったそうです。

しかしゴッホはこの4作目の『ひまわり』で黄色×黄色、ダブルイエローの作品を生み出してしまうのです。

ゴッホの代名詞になった“黄色×黄色”は、日本の影響が大きかったのです…!

日本のクレポン(ちりめん絵)の、鮮やかな色彩に夢を見たゴッホは、江戸浮世絵の色による配置を学びます。

これまでの遠近法を破棄し、色の配置のみで遠近感を出す試み。

ゴッホにとって、“黄色”は希望の光であり、江戸:縮緬(ちりめん)浮世絵の中に見た憧れの地、光にあふれた鮮やかな場所…日の国、日本を示す色でもありました。

クレラー・ミュラー美術館所蔵の「種まく人(フィンセント・ファン・ゴッホ)」作品写真
『種まく人(1888・アルルにて)』フィンセント・ファン・ゴッホ
“The sower” Vincent van Gogh
(C) Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

鬼才からなる色遣い、筆使いは、あまりに新すぎたため、生前は世間からなかなか評価されず…はるか遠い、日本に憧れていたゴッホ。

今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」にて、そんな日本に憧れて生まれたゴッホの代名詞ともなる“色”、そして筆致による“技”で完成した『ひまわり』が本人の代わりに来日したのです。

そんなゴッホを想うと感無量(´;ω;`)

ゴッホ以外にも、この第7章には、19世紀の「バルビゾン派(印象派への流れを作ったグループ)」のカミーユ・コロー、続く「印象派」のクロード・モネや、ゴッホと同じく時代を築いた「後期印象派(ポスト印象派)」のポール・セザンヌ …etc. 19世紀後半のオールドマスターの名画が集結しています!!

一見どころか五見くらいの価値ありです♪

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の展示作品リスト

【第1章】イタリア・ルネサンス絵画の収集
1. パオロ・ウッチェロ「聖ゲオルギウスと竜」
2. カルロ・クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」
3. ドメニコ・ギルランダイオ「聖母子」
4. サンドロ・ボッティチェッリ「聖ゼノビウス伝より初期の四場面」
5. ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「ノリ・メ・タンゲレ」
6. ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド「マグダラのマリア」
7. ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ「円柱の上に兜を置いた紳士の肖像」
8. ヤコポ・ティントレット(本名 ヤコポ・ロブスティ)「天の川の起源」

【第2章】オランダ絵画の黄金時代
9. レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」
10. フランス・ハルス「扇を持つ女性」
11. ヤン・ステーン「農民一家の食事(食前の祈り)
12. ヘーラルト・テル・ボルフ「手紙を書きとらせる士官」
13. ヨハネス・フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」
14. ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ「ロブスターのある静物」
15. フィリップス・ワウウェルマン「鹿狩り」
16. ウィレム・ファン・デ・フェルデ(子)「多くの小型船に囲まれて礼砲を放つオランダの帆船」

【第3章】ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
17. アンソニー・ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」
18. ヘリット・ファン・ホントホルスト「ボヘミア王妃エリザベス・ステュアート」
19. ジョージ・スタッブス「ミルバンク家とメルバーン家の人々」
20. ジョゼフ・ライト・オブ・ダービー「トマス・コルトマン夫妻」
21. ジョシュア・レノルズ「レディ・コーバーンと3人の息子」
22. トマス・ゲインズバラ「シドンズ夫人」
23. トマス・ローレンス「シャーロット王妃」
24. トマス・ローレンス「55歳頃のジョン・ジュリアス・アンガースタイン」

【第4章】グランド・ツアー
25. ジョヴァンニ・アントニオ・ペッレグリーニ「井戸端のリベカ」
26. ピエトロ・ロンギ「ヴェネツィアの占い師」
27. カナレット(本名 ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)「ヴェネツィア:大運河のレガッタ」
28. フランチェスコ・グアルディ「ヴェネツィア:サン・マルコ広場」
29. カナレット(本名 ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)「イートン・カレッジ」
30. ジョヴァンニ・パオロ・パニーニ「人物のいるローマの廃墟」
31. クロード=ジョゼフ・ヴェルネ「ローマのテヴェレ川での競技」
32. ポンペオ・ジローラモ・バトーニ「リチャード・ミルズの肖像」

【第5章】スペイン絵画の発見
33. フランシスコ・デ・ゴヤ「ウェリントン公爵」
34. エル・グレコ(本名 ドメニコス・テオトコプーロス)「神殿から商人を追い払うキリスト」
35. ディエゴ・ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」
36. フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ「喪服姿のスペイン王妃マリアナ」
37. ルカ・ジョルダーノ「ベラスケス礼賛」
38. フランシスコ・デ・スルバラン「アンティオキアの聖マルガリータ」
39. バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「幼い洗礼者聖ヨハネと子羊」
40. バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「窓枠に身を乗り出した農民の少年」

【第6章】風景画とピクチャレスク
41. ニコラ・プッサン「泉で足を洗う男のいる風景」
42. クロード・ロラン(本名 クロード・ジュレ)「海港」
43. サルヴァトール・ローザ「道を尋ねる旅人のいる風景」
44. アルベルト・カイプ「羊飼いに話しかける馬上の男のいる丘陵風景」
45. ヤーコプ・ファン・ロイスダール「城の廃墟と教会のある風景」
46. リチャード・ウィルソン「ディー川に架かるホルト橋」
47. トマス・ゲインズバラ「水飲み場」
48. ジョン・コンスタブル「コルオートン・ホールのレノルズ記念碑」
49. ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス」

【第7章】イギリスにおけるフランス近代美術受容
50. ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル「アンジェリカを救うルッジェーロ」
51. ジャン=バティス=カミーユ・コロー「西方より望むアヴィニョン」
52. アリ・シェフェール「ロバート・ホロンド夫人」
53. アンリ・ファンタン=ラトゥール「ばらの籠」
54. カミーユ・ピサロ「シデナムの並木道」
55. ピエール=オーギュスト・ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」
56. エドガー・ドガ「バレエの踊り子」
57. クロード・モネ「睡蓮の池」
58. フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」
59. ポール・ゴーガン「花瓶の花」
60. ポール・セザンヌ「プロヴァンスの丘」
61. ポール・セザンヌ「ロザリオを持つ老女」

グッズ販売

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(国立西洋美術館)のグッズ販売の様子
グッズ売場(国立西洋美術館)

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」では、フロアでグッズ販売が展開していました。

どれをとっても魅力的なものばかり。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(国立西洋美術館)のグッズ売場で購入した公式図録
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 公式図録(税込2,900円)

今回は、悩みに悩んだ挙げ句、図録を購入。

映画のパンフレットと同じく、美術展の様子をまざまざと思い出すことができる上に、メイキングのような裏側を知ることができるので…かなり好きです♪

開催概要(東京・大阪)

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」のチラシ写真
東京/国立西洋美術館チラシ 表
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」のチラシ写真
東京/国立西洋美術館チラシ 裏

展覧会名:
「MASTERPIECES FROM THE NATIONAL GALLERY, LINDON?」(英名)
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(和名)

日時指定チケット料金:
一般1,700円、大学生1,100円、高校生700円
※東京会場のチケット内容料金です。大阪会場については公式サイトをご確認下さい。

URL:
https://artexhibition.jp/london2020/

■東京
会場:国立西洋美術館(〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7)→Googleマップ

期間:2020年3月3日(火)~6月14日(日) → 2020年6月18日(木)〜10月18日(日)
9:30~17:30(金曜日、土曜日は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日、9月23日
※ただし、7月13日、7月27日、8月10日、9月21日は開館

▼国立西洋美術館についてはこちら

■大阪
会場:国立国際美術館(〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55)→Googleマップ

期間:2020年7月7日(火)~10月18日(日) → 2020年11月3日(火・祝)〜2021年1月31日(日)
10:30~17:00(金曜、土曜日は20:00まで開館)※入館は閉館の30分前まで ※変更になる可能性があります

休館日:11月16日、11月24日、11月30日、12月14日、12月30日〜1月2日、1月18日

国立国際美術館の詳細はこちらから


会場レンタル or アプリ配信で利用できる音声ガイドでは、俳優・古川雄大さんが「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の魅力をご紹介。

公式図録やグッズもオンライン購入が可能です。

  • お一人につき、一枚の購入が必要です。
  • 中学生以下は入場無料です。小・中学生の方は「日時指定入場券」・「日時指定券」をお持ちの付添者がいる場合は、同じ入場時間に、ご一緒に入場いただけます。それ以外の場合は、当日先着順でのご入場となります。当日の混雑状況によっては入場整理券を配布します。小学生未満の方は「日時指定券」や入場整理券のご利用は不要です。付添者と同時にご案内します。
  • 「日時指定入場券」を購入された場合、追加で「前売券・招待券用 日時指定券」を購入いただく必要はありません。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の総括

長い歴史を持つナショナル・ギャラリーがおよそ200年かけて収集した400年相当の絵画史を、ブログで綴るには限界があります… 無念

ですがしかし、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は、これまでに観てきたイギリスにまつわる絵画展とは異なる角度でイギリス美術の《格》を感じさせてくれる絵画展でした。

歴史的な背景から、他のヨーロッパを追いかける形で時間をかけて…イギリスに多色な“美”が集結していきますが、いつの時代の画家・コレクター達にも間違いなくあったのは、自身とは異なる色への《憧れ》と《理解》。
この2つを各章の構成から、確かに感じました。

ー Art is adoration. 賛美 

一見、異なる色にも見える新時代の画家達が生んだ感性の“カラー”は、国や時代を超えて、他者の感性にうまく重なったことで美しいグラデーションを生み、この世にただ1つの新色となって美術史を塗り重ねてきました。

そんな色彩豊かな“カラー”を感じられる、極彩色の企画が「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」なのです

第7章にある筆致(=筆のタッチ)があからさまに出ている印象主義の画風は、前6章にあるイギリスの画家、ウィリアム・ターナー達がもたらした美のバトンがあってこそ。

イタリア、オランダ、フランスから受けた美の恩恵が、イギリスからどう各国へ回帰して行ったのか?

そこを見つめていただければ、第1章をぐるりと回る…この順路の意味も深いものになってきます!

第7章までご覧になった方は是非、第7章から第1章まで戻って観ることをおすすめします。実際そうやって第7章→第1章までを逆順路でも鑑賞しました。

必ずや…他の鑑賞者のご迷惑にならないように逆走してください。笑

そして、ナショナル・ギャラリー創設の際、第一歩を踏み出してくださった、アンガースタインさんの肖像画には一礼を…(´-ω-`) )))笑。

美術は《ジャンル》だけでなく、その時代に重んじられていた、または流行っていた《様式》を知ってから観ると、描かれた当時の鑑賞者と同じ視点で、発見したり、驚いたり、考えたり、惚れ込んだりできます。

時代を超えて…これは究極の疑似体験です。

2024年に創設200年を迎えるナショナル・ギャラリー★

2024年までには、これほどの画家、収集家たちの想をつなげてきてくれた美術館のアニバーサリーを、その意味を感じながら祝福できる層が日本にも増えることを願います。

国立西洋美術館の施設概要

当記事は個人的な見解に基づく内容で、作家名・作品名は、ナショナル・ギャラリー展の表記に倣っています。

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国立西洋美術館で開催された「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の写真

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